そして、マンマはこう言った。


「小絵、顔色が悪いよ!
どうしたの-
大丈夫かい?」


-グラツィエ、マンマ!
小絵は大丈夫よー

今日から、又お仕事よ! がんばるわ♪-


その声に、そばにいた食事中の他の下宿人の男達は-

いっせいに、肩をすくめ、 頭を横に振っていた。


小絵には、わかっている。 自分の顔色が悪い理由が


そこにいる、下宿人の男達に、バレバレだ!


昨夜は、彼がやってきて、 ずいぶんと遅くまで-


小絵のことを離さなかったからだ-


その彼というのは-
イタリア人のルカという 28才の青年である。


小絵と同じデザイナーの勉強をしている。


しかし、マンマは小絵が、 夜遅くまで彼のルカを-


自分の部屋に引込んでいる ことは、知らないはずだ。

マンマは年寄りだから、
夕食の支度が済むと-


あとは、サッサと自分の部屋に入って寝てしまうからだ。


彼は、そのことを知っているから、マンマが寝静まってから、そおっと階段を 上がって来る-


だから、マンマは知らないはずだ。


帰る時も、夜中や明け方近くに帰ったとしても-


気がつかないでいる。


しかし、下宿人の男達は- ルカのことは、手に取るようにわかっていた-


何故なら、それはルカの 出す、大声によってだ。