「どうせセレモニーみたいなものだ。
君がやった方がいいんじゃないかと思ってね」

のどの奥で彼は笑う。
その笑い方が何か癪に感じたが、
力があることだけはひしひしと感じた。

つばを飲み込み、こわばった顔でキラはそれに手をかけた。
静かに、静かにそれを開く。

ぎ、と小さな音がした。
ばたん、とそれを落とした時、
むせかえるような花の匂いが辺りを包んだ。
ああ、葬ったときに入れた あれ か。

「……っ」

息をのんだ。

青白かった肌に血の気が戻っている。

「偽らないと言ったろう」

ルシフェルはキラの背後でささやく。
驚きと、自分でも認識しがたい感情で胸が満たされていくのがわかった。

「リフ……」

自然に涙があふれてきた。
うれし涙なのかなんなのかはもう己の知る領域ではなかった。

伏せられていたまつ毛が小さく震えた。
濃い金色のそれが、何度か震え、眼の奥が動いているということが知らされる。
ふ、と小さく息が吐かれたことにも気づいた。
文字通り息を吹き返したのだ。
それから、ゆっくりと瞳をあける。
もう、どれだけ長いこと見ていなかったのだろうか、彼のアメジスト色の瞳が光を取り戻した。

目が開いた後は、無言で
一回、二回、と瞬きをし、目のみであたりを見回す。

そして、もう一度瞬きをする。

「リフ!」