窓ガラスの割れる音
戸棚が豪快にひっくり返る音
錆びの匂い
皿の割れる騒音
土と泥の匂い
うっ血した肌の色
悲鳴
あたりを濡らす紅色
それから、
それから…

それから、なんだっけか?

思い出せなかった。

自分が何人斬ったのか、
いったい何をしたのか
なんのためにしたのか
いつ どこで だれを なにを なぜ どのように

なにをしたっけ

すべてが終わったとき自分はただ冷たい金属を握りしめて
白い服、あたり一面を真っ赤に染め上げて
ぼんやりと そこ に立ち尽くしているだけだった。

ごろごろと無造作に散らかった死体に
ルシフェルの飼っていたペットがむらがっている。

「……」

なにも言葉は出なかった。
そこから立ち去る気もせず、ただぼんやりとそれを見つめていた。

「いやぁ!すばらしいね、まったく」