「クロちゃんが、全部食べるのか?」
「いや、シロちゃんもたぶん食べると思う」
「……」

うーん、とルシフェルは考えこんで訂正した。

「あ、あれは生ものだからあれか。腐るか。じゃああれだな…」

他の子たちと山分けにして一気に食べてもらうしかないね、と
ルシフェルは笑った。
どこからかネズミも這い出てくる。

「……」

キラは唖然としたというか、
呆れたというかで開いた口がふさがらなかった。
ネズミはちゅうちゅう言いながら
ルシフェルの足元をちょこまか走り回る。

「それにも名前がついてるのか」
「ああ、こっちがねず介、
こいつはねず美、それから」
「いや、もういい、すまない」
ペット自慢につきあうほど暇ではない。

「おや、そうか。こちらこそすまないね。
この子たちのこととなるとつい」
「構わない。……ところでその代償、どのようにして払えばいい」

ルシフェルは笑って答えた。

「簡単だよ。さあ、手を出してごらん」

手渡された物はひやりと冷たい感触があった。

「ナイフ……?」

掌におかれた鞘に納まっている小柄なナイフは
あの賊たちが持っていたものによく似て、しかし
それよりも品のいいつくりに
美しい装飾が施されたものだった。

「そう、これで十分だろう」