「良かろう、知ってのこととは思うが、礼節は弁えねばな。
 わが名はルシフェル。
なんなりと申しつけるがよい天使長殿」
「……」

魔王の釣り上った口角から覗く犬歯
赤い瞳は強く光った。

「復讐を。そして、再生を」
何の迷いもなく澄んだ声で発せられた言葉に
ルシフェルの顔は驚きと関心で輝いた。
天使の唇からこぼれた音は 復讐。
低い声で紡がれたもっとも願ってはならないもの。

「復讐はともかく、再生、か?」

どこでその噂を聞きつけたのかねぇ、とルシフェルは笑い、キラに背を向けた。

陶器のように白い指先に、炎を灯す。
ゆらゆらとゆらめく影が不思議な形を形成した。

「どこでも、構わないだろう」
「まあ、そうだな」
「死者を呼び戻すすべがある、
それは真実か」
「ああ、私は偽らない」

その噂、とは、対価の血・命により死者をよみがえらせる呪術
それをなせるのは王、ルシフェルであるということ。

「対価はいくらだ」
「持ってくる覚悟はあるのか」

キラは迷うことなく間髪入れずに
瞳に一点の曇りもなく答える。

「もちろん」

ルシフェルは振り向くと囁いた。

「そんな事をしてはお前の身分、
命が危ないのではないかな?」

振り向いたルシフェルは美しい女の姿だった。
誘惑するかのようにキラの顔を両の手で包み、笑う。