必死になり情報を集めて回った。
昔聞いたことのある名を頼りに

ルシフェル、魔界の王
何度か聞いたその名を呼ぶことになるとは
誰が予測できただろうか。

禁断の術、対価を求める魔王の腕を
不思議と恐ろしいと感じなかった。
その罪に手を染める自分を疎ましいと感じなかった。
今はただ復讐の炎に燃えるしかなくて
ただただ呪うことだけを考えていた。

――――――

リフが命を落としてから三日後に
ようやく資料を整理し終え、必要なものをそろえ終えた彼が向かった場所。

森の奥の古びた洋館、不気味な鳥の声。
そのすべて、これからそれにすがる自分を思うと
ほんの少しだけ嘲笑がこぼれた。

落ちたものだな。
冷静に考えれば、そう思えた。

「そこにいるか、…魔を統べる王よ」

扉をたたけば重い音を響かせてそれが開く。
美しいシャンデリア、真っ赤な絨毯、真っ赤なカーテン
黒い調度品。
塵一つない大理石の床から冷気を感じた。

「いかにも、私がその”王”であるが?」

長い黒髪、引きずる黒い外套、燃えるような緋色の瞳
病的に白い肌、黒い翼、まがまがしい気。

それ は 確かに魔を統べる者の風格であった。
一瞬怯んだものの、静かに歩み寄れば、彼の口角が上がる。

「…これは……天使長、キラ殿ではないか」

「僕はそんなに有名か。知っていてもらえるとは光栄だな」

キラもまた口角をあげる。

ばさり、と黒いマントを持ち上げ、彼は重厚なソファから立ち上がった。

「どうやら……私を討ち取りに来たという風ではないようだね」

キラの顎を掴んで目線を合わせる。
キラの蒼い瞳に映る虚空に彼は息をのんだ。
これが天使と呼ばれる生き物の目なのか?
あまりに

醜い

そして、美しい と。

「上等だな」
「…頼みがある」
「ほう」

天使が、悪魔に頼み事とは、と彼は笑った。