「キラ……」

怒りは何も生まない。

「……わかっています……」

すみません

声が出なくて、
唇がその言の葉の形にわずかに動くのみだった。

渇く

唇が乾いて
瞳が乾いて
手のひらはどんどん体温を失っていく

気が遠くなるのを感じた。

ばたん、と音をたててボスの部屋の戸を閉めて廊下を歩く。
角のあたりにしゃがんでいたのは

「リフ?」

膝を抱えるようにうずくまったリフが顔をあげた

「先輩……」
「何してるんだ?」

弱弱しく笑ってリフは答えた。

「待ってたんです」
「え……」
「ひどく元気がないし、
足もともおぼつかないじゃないですか。
 ……なんかあったら、いやだと思って……」

心配症だな、と笑ってやった。
逆に笑い返された。

「それだけ先輩は今、
よわよわしい感じなんですよ」

ああ、そうか。

今の僕はとても弱いんだ。

部下の一人も守れない。

「先輩」