そこにいるのか?
キラは藁をもつかむ思いで西を目指す。

「ありがとう!」
「ダンナ、気をつけてなぁ」

鼠は耳をぴこっと動かして木の上に上った。
キラの行く道を見て、
首をかしげる。

「ダンナは、いったいどういう仕事の方なんでしょうな」


月明かりが照らし出す森の陰に、
キラは溶け込む。

一方、廃墟の中の少女はひとり呟いた。

「お姉、ちゃん」

小さく響いた言葉は闇にかき消され、
シャーリィは一滴涙をこぼした。
砕けた墓石の前、
シャーリィは一輪の花を手向ける。

「……会いたくて、きたよ」
答えるように、雲に隠れていた満月がそっと顔をのぞかせる。

「…私ね、……今、
どうしたらいいのかわからないの」

ぺたり、と座り込んで
シャーリィは月を見上げた。

「シャーリィ!シャーリィ……!」

キラの叫び声がこだまする。

「キ・ラ!」

ひょい、とキラの前に姿を現したのは、キールだった。
得意げに笑ってみせる。

「あのねぇ、僕、もお見つけちゃったあ」
「……」
「僕が、先だったみたいだね」

そう言ってキールがふわり、
と浮いてみせると
その姿の奥にあったのは
倒壊しかけた教会