助手席で花びらをヒラヒラさせて遊ぶ妻を見ると、胸の奥がぎゅっと締め付けられ、その反動で耐えていた涙が緩んでしまった。



「……っう……ごめん。
ごめんなぁ。

守るって約束したのに…。

俺が、お前を守るって約束したのに…」




妻は不思議そうな顔をして俺の涙を拭いてくれた。


その顔は笑っている。


何もわからず、ただ笑っている………。






…妻は、数ヶ月前事故に遭った。



一人息子と買い物帰りに一緒に歩いていたところを、飲酒運転でフラフラと走る車にひかれた。




妻の足はもう…動かない。

そして、息子は…もうここにはいない。



妻は、息子を失った事実を否定するように息子の記憶と、過去数年の記憶を自ら手放した。



…俺は、それほどまでに傷ついた妻の苦しみにも気付かず、何もできずに……壊れていく彼女を見ているしかできなかったんだ。


医者が言う
“ショックによる一時的なもの”という言葉を信じて……