「次、準備して下さい」

 係のその声と、前のグループへの大歓声で僕は我に返った。校内一の人気があるバンドだとかで、その歓声は半端じゃない。

 熱気の収まらない中、照明は暗転し、バンドのメンバーはセットや器材を片付け、上手へ捌ける。そして同時に、実行委員たちがステージの端からピアノを移動させた。バミリに合わせて位置を定めると、鍵盤の蓋を開けて、そして慣れない手つきで大屋根を持ち上げた。

 反響板は客席に向けて開く。さあ、君たちはどんな音楽を奏でるんだ。そんな声が聞こえるような気がする。どっしりと構えた、随分古いグラウンドピアノだ。まあ、宜しく頼みます。僕は心の中で呟いた。