「圭太郎に結婚してくれって言われたらどうする? 一緒にドイツに来てくれって」
答えに詰まる。
「酒井にプロポーズされたんだよね」
「どうしてそれを」
「本人が俺に言いに来た。空港に向かう前に、店に来たんだよ。しばらくいないから、その間は早紀ちゃんをよろしくお願いしますってさ。その後は、一生僕がそばにいますから、と」
赤信号で一度止まる。わたしの思考は前進させなければいけない。
「今、確かに言えるのは」
「うん」
「わたしは、今の仕事を続けたい。わたしの手の届く限りだけど、悲しい思いをしている子に手を差し延べることをやめたくない。だからドイツには行かない」