「は?」

「そんな間抜けな答えなら、どうでも良い。俺は連弾はそんなにしないし、クラシックばっかり弾いてるからこの曲のことは良く解らない」


 何か教授して下さるらしい。僕は圭太郎の態度が大きいのがあまり気に入らないが、ピアノがかなり巧いということはわかっているので耳を傾ける。




「まず」

 圭太郎は楽譜を指差す。

「これ、一台で弾けるんだろ? 格好つけるな」

 確かに、僕が選んだ曲はピアノ一台用の連弾だ。でも二台の方が見栄えも良く、第一、余裕を持って弾ける。一台だったら僕の右手と早紀の左手がぶつかってしまうだろう。気が引ける。