「俺もお前に話があるんだよ」
 仏頂面の圭太郎が降りてきたのは、僕とニーナでお茶の準備をしているときだった。

 話すならこれを開けたら、とニーナは僕の手から紙袋を取り上げた。
「ライスター、キッチンを借りてもよろしいでしょうか。ポットと、カップも」
「構わないよ」
 こっちだよ、とライスターに連れられて、キッチンに立つ。やかん(ケトル、と言うべきか)に水を入れ、火にかける。その間にニーナは包みを開けて、茶葉を取り出す。
「ティーバッグね」
「急須はないと思って」
 そんなやり取りの最中に、圭太郎は顔を出したのだ。

 圭太郎、ニーナ、ライスターにドゥメール。僕を含めて五人分のお茶を入れた。しかし。
「ティーカップで恰好つかないけど」
「味は一緒だ」
 僕は圭太郎と、圭太郎の部屋で一対一で向き合っている。圭太郎は湯気の立つカップを口に運び、ゆっくりと飲んだ。焦らすように。
 だがそんな悠長な、和やかな会話をしにきたのではない。牽制したって無意味だ。
「弾けないと聞いた」
 直球勝負だ。
 ずっと分かっていた。いつか、圭太郎と向かい合って話す日がくると。僕が早紀を好きになり、早紀は圭太郎のことを想ったまま、圭太郎を送り出し、僕を迎え入れたのだ。
「早紀のことで、動揺しているんだろう?」