ゲームはGm11が終始優勢で、中でも女性陣がよく走って、動いて、笑っていた。ビアンカもデリアも、そしてニーナも。ディフェンダーとしてはもう少し仕事があっても良いのだが、チームが押しているのだから文句は言わない。
 会社チームは、フォルカーなどはよく走ったけれど、音楽家に比べると体力の無さが明らかで、自分の守備範囲をボールが過ぎれば、動くのをやめ体力温存に努めていた。せっかく良いプレーをしてボールを維持しても、そこには最低限の人数しかいないためプレーが発展しない。どうにかボールが上がってきても、一人で進もうとし、パスを効果的に使うでもないので、僕は難なくボールを奪えた。

 クリアしたボールが高めの放物線を描いた。落ちた先は圭太郎の足元だった。
「圭太郎!」
 デリアが移動しながら声を上げた。ボールを受けて、圭太郎がドリブルで上がっていく。デリアの移動地点を見てパスを出す。が、ボールは明後日の方向に飛んでいき、フリッツが改めてデリアにパスする。

「今のはナオが悪いぞ」
 アルノーが楽しそうに言う。
「圭太郎のパスが下手くそなのは、もう知っているだろう」
 でも圭太郎の近くが空いていたのだから仕方ない。

 圭太郎もよく走った。チームの中ではスピードもあるし、息も持つ。だが、ボールの扱いがまずい。パスがとんでもない方向に飛ぶ。