「ナオ、みんなを紹介するよ」
 ゲオルクに促されてチームの輪に入り、そこにいたメンバーを見たとき、ようやく今日のニーナの意図が分かった。
「よう、酒井」
 圭太郎が手を上げた。

 GM11は音楽家の知り合いで組んだチームで、さらに言えばMは小文字のm、つまりGm11。
 ゲオルク・バッシュのGを先頭に、妻のバイオリニストのビアンカ(ゲオルクより一回り年下で、今年35になる。選手兼マネージャー)、彼女のカルテット仲間のバイオリニストのデリア(選手)、ビオラのフリッツ(選手)、チェロのアルノー(選手)。この五人がチームの発起人で、名前の頭文字を並べるとGBDFAと音の名前になる。ドイツ音名でBはシのフラットだから、GBD(ソ、シ♭、レ)のト調の短三和音(Gm)、そこに7度のF(ファ)、11度のA(ラ)を加えたGm11という和音ができるのだ。短調でありながらも、優しさや希望を感じさせる和音で、11はサッカーに通じることからそのままチーム名としたそうだ。

 五人がそれぞれ知人に声をかけ、時々にメンバーを変えながらやっているのがこのチームだ。と、キーパーのアルノーが話してくれた。
「今日が本番の奴がいて、どうしても二人足らなかったんだ。それを圭太郎に相談していたんだけど、良かったよ、ナオは経験者だろう?」
 緑色のビブスをつけて、サイドバックの位置で僕は身体を動かしている。久しぶりにサッカーが出来るのが、正直なところ嬉しくて仕方ない。