「な、何笑ってんだよ」

「別に?」


動揺を隠すように、いつものように素っ気なく答える。


すると、すかさず彼が一言。


「キモい」


いつもなら、この一言に反抗する。


だけど今は、この言葉が有り難くて、彼があたしの傍にいるんだなって、すごく嬉しくなった。


夕焼けの優しい光に包まれながら、あたしは蔵島恭平の腕を軽く殴った。


二人して笑いあって、『ごめん』を何度も繰り返す。


彼も口元を緩ませながら、チラチラあたしの様子を窺うように『ったく、単純な奴』と、憎まれ口を叩いた。


このくすぐったさは何だろう。


彼の傍にいるだけで、驚く程心が落ち着く。


正直、こいつの事好きだったりして、なんて考えた事もあるけど、なんだか、まだよくわからない。


ただ傍にいてほしいだけで、『好き』とは違うかもしれない。