「怒鳴ったりして悪かった……。
まさか、おまえが学校休むとは思ってないし、マジで、なんつーか、別に心配したわけじゃねぇけど」

「いや、あのね、謝るのはあたしの方で、あんたは何も悪くないし、あたしが一方的に物事決めつけちゃって、あんたの気に障ること言って、あの、ほんとにごめん」


片言で頭を下げる。


国語が苦手なあたしは、うまく言葉を繋げることが出来なかった。


だけど、全て伝えたかった事だ。


だから、彼にきちんと伝わったのか気になって、深く下げた頭をゆっくりとあげた。


隣の彼を見ると、あたしと同じように彼もあたしを見ていた。


あり得ないぐらいの近さで、ばっちりと目が合う。


近くで見る彼の瞳はすごく澄んでいて、見つめれば見つめるだけ吸い込まれそうになる。


心を奪われそうな……って、あ、あたしってばっ。


何、こいつの事見てんだろ。


あり得ない、あり得ないっ!


あたしはハッとして、慌てて彼から視線を逸らした。


きっと、不自然に泳ぐあたしの目を、彼は不審に思ったに違いない。


だけど、意外な事に彼の目もあたしと同じくらいに泳いでいた。


長い沈黙が二人の間に流れ、どこかぎくしゃくしてしまう。


「ま、まぁ、あれだ。明日、ちゃんと学校来いよ」


鼻をかきながら、彼がしどろもどろで言う。


「う、うん」


明らかに動揺しているあたしも、彼と同じくしどろもどろで答える。


「お、おう」


なんか、不思議な気持ちになった。


今まで思いつめていた心が、まるで嘘のように軽くなる。


おまけに、体がポカポカと温まるような感覚に、胸がムズムズして、思わず笑みが零れた。