「恭平が、友達の話をすることは今までなかったんだよ。
だけど最近は、君の事をくすぐったそうに話してる。
だからね莉奈ちゃん。恭平と喧嘩をしてもいいけど、恭平から離れないでやってほしいんだ」


あたし、あいつから離れようなんて思った事はない。


ただ、あたしが原因であいつから離れていくんじゃないかって、不安だった。


それは、真由にも同じ。


大切な友達なのに、修正が困難な亀裂が入ってしまった。


どうしたらいいのかわからなくて、辛い。


だけど、どうしてかな。


真由と、蔵島恭平に対する気持ちが少しだけ違う。


何がどう違うかは、うまく表現が出来ないんだけど、あいつがもし、あたしから離れたらと思うと、怖くて怖くて仕方ないんだ。


大ちゃんは、『気分が落ち着くまでここにいなさい』と、それだけ言い残して、教会から出て行った。


今は、大ちゃんのその気遣いが嬉しかった。


誰かと話すより、一人でなにも考えることなく、ただ、冷静になりたかった。


教会に、一人。


目の前に輝くステンドグラスを見ていると、すーっと心が軽くなっていった。


あたしは椅子の背もたれに体重をかけて、しばらくステンドグラスを眺めていた。