「恭平と、喧嘩でもしたの?」

「……っえ?」


大ちゃんの一言で、忘れかけていた重要な問題をふと思い出した。


そもそも、あれだけ悩んでおきながら一瞬でも忘れてしまってた自分に腹が立った。


大切な、友達の事なのに。


「学校休んだ理由、もしかして、恭平にある?」


あたしは視線を落として、膝の上に置いた手を忙しく動かした。


最近のあたしは、身近な人に頼りっぱなしだ。


一つも解決しないのに、問題は次々に溢れてくる。


いい加減、自分一人で解決できるだけの力をつけたい。


早く大人になって、誰にも迷惑をかけない方法を見つけたいんだ。


なのに、なんで考えれば考えるだけ、複雑な糸は縺れていくんだろう。


「話したくなければ、別にいいんだ」


津波のように、あちらこちらから色んな思いが押し寄せるあたしの隣で、大ちゃんは先程と同じく優しく微笑んでいた。


「ちょっと気になっただけだから。
昨日、珍しく恭平が君の事を話さなかったからね、何かあったのかなと思って」