「合歓、ちょっといいかしら。これからのことなんだけど、妃のこと、秘玉の主のことはわたくしがサポートをします。そして、この国に関する礼儀作法・国土・歴史・政治などに関してはこのジルに一任するので、何かあればわたくしたちを頼ってください」
一任するってことは、わたしの教師になるってこと?
いや、そもそもこれってどういうことなの。妃って……いまだに信じられない。
一人で抱え込んで、悩んでいると少女が再び言った。
「遅くなりましたけど、わたくしは代々の秘玉の管理者――フロウ。秘玉のことに関してはわたくしが一番知っているから便りにしてください。……あぁ、あとそれと、貴女に逢いたくてたまらない皇子が押し掛けてくるかもしれないけれど、その時は適当にあしらった方がいいわ」
「適当にあしらうって……」
見ず知らずの人にそんなことできるほどの度胸なんて持ってない。心の中では、いろいろ言っていてもそれを口に出すことなんて無理に等しかった。
「とりあえず、貴女はまだ混乱している。今日一日はゆっくり休んで気持ちの整理をした方がいいわね。時間はまだ沢山ある。明日また、此方に来るから、今日は自由にしていて」
「そ、そんなわたしは早く帰りたいのに」
愚痴を言うように、小さな声で言ったつもりなのに、このフロウという少女には聴こえていたみたい。なんという地獄耳。
「貴女がそう思っていても仕方のないことなのです。すべては運命の為すがまま……」
どこか遠いところに視線を向けながら言う少女の姿は、やはり大人じみたものだった。そして神秘的。そんな彼女の姿を見るとわたしは何一つ言うことができず、黙り込んでしまった。