でもどうしてだろう。心の中では、落ち着いているわたしが居る。どうせ他人のことだろうと考えていたり、はたまたまるで初めからわかっていたことのように。

「でも待って、人違いじゃないの? 何でわたしなのか分からなくて」

 意地悪い悪あがきにしか見えないと思う。わたしもそう感じた。
 でもそれは本当のことだった。

 それに対し、少女は迷うことなくはっきりと応えた。

「その秘玉に触れ、光らせることができた時点で貴女は選ばれた乙女です。導き手であるわたくしや貴女以外の常人には触れることも、光らせることもできません」
「あぁ、でも待って。わたしこれから大学の準備とかもあるし」

 もう駄目だ、頭の中ではそう思っていたのかもしれない。だけど、口から出るのは必死の言い訳。フリーズした頭を解凍しながら言葉を選ぶ。

「それなら大丈夫です。その首飾りはまだ未完成なので、完成までの間、一ヶ月向こうで過ごした後に一週間の猶予期間で此方に戻れます。時間の流れは此方で作用させれば問題もありません」

「時間の流れって……貴女の言う国とはどこのことなの?」
「神預国《シロラーナ》、この世界とは別の平行世界です」

“さぁ 新しい妃様、参りましょう”


 有無を言わせぬ物言いに、眩暈がしてきた。
 気を失う前にわたしが見たのは、自分の手を引きどこかへ向かう少女“導き手”の姿だった。
 その姿は、運命のお導きのようだった。