「合歓~、なんで先ほどからずっと寝ているんだ~?」

 別に寝ていないですけど。
 ちょんちょんと、細い指でわたしの頬をつついてくる。細いのに、それはしっかりとした男の指だと、つい目が行ってしまう。

「疲れたから、寝かせて」

 そもそもなんであなたは此処にいるんですか。皇子なら、もっと忙しいんじゃないの?
 ほら、わたしより一応年上みたいだし……。って気になるから聞いてみるか。

「ねえ、皇子は何歳なの」
「皇子じゃない、名前で呼び合おうって話したじゃないか」

 そういや、そんな話をしていたかもしれない。昨日寝る前に。眠かったので、あんまりはっきりとは覚えていないのだが。

「って、話をはぐらかさないで。皇子……リュイスは、わたしよりも年上じゃないのかな、と思って。ちなみにわたしは、18歳」

 なんか子どもっぽく見えても、体格はしっかりした大人の男だし。

「私は21だよ」
「へぇー21……」

 にじゅういち!? 二十歳を越した大人がこんなんでいいの!?
 年上だろうとは思っていたけど、二十歳過ぎていたなんて、世の中分からないことだらけである。
 そんなことを思いながら、リュイスの方を見ると、やっぱりさっきと変わらない笑顔を向けてくる。なにが、そんなに幸せなんだろう、この人は。


 そんなことを思うと、自然に笑みが零れた。
 ずっと辛いことばかり、嫌になることばかりだったのに、なんでこうも心が救われるような気持ちになるんだろう。