そこに居たのは薄い白金の長い髪をした女の子。そして瞳は、ルビーのような宝石をした赤い瞳。
 確かに、今まで鏡なんて見る暇はなかったけれど、髪は確かに黒かった。こちらに来て起きた時目に映ったのは、流れる黒髪。瞳までは確認していないけれど。
 なら何時の間にこんなことに。食事の時に邪魔になるからと、上にくぐられ、それからお風呂に入って……でもその時はメイドさんがしてくれたから良く見ていなかった。
 でもなんでこんな変化に気付いていなかったの!?
 なんで、あの子は……フロウは言ってくれなかったの!?

「目の前に居るのは誰……これがわたしなの!?」

 わたしが動くたびに、鏡の人も動く。それを見て、余計に悲しくなった。髪を一房とってよく見てみると確かにその色は透き通った薄い金色。

「なんで、なんでなのよ……」

 身体中の力が抜けて、倒れこむ。


 大きな部屋の中にある小さな洗面所の中からの泣き声なんて、誰の耳にも入らない。入ってなんか居ない。
 だれか、たすけて。この場所から、わたしをたすけて――。

 一人で居ることが無性に怖かった。なきつかれ、もう涙もでないかと思ったのに、出るものは出る。一体どこからそんなにもでるのだろう。

 でも人間は図太い生物。とりあえず、部屋に戻りベッドの上に座り、布団に包まった。
 少しでもこの姿を見たくなくて。自分から逃れるかのように。


 朝起きて、メイドさんに取り次いで貰い、フロウにこのことを聞くことにした。