翌朝、初めてこの屋敷……というか宮殿の外に出ることができた。天気は快晴。雲ひとつない天気とは正にこのことだろう。
 気温も温かく過ごしやすい。今は宮殿案内ということでいろんなところをまわっている。ここも建物の外だけど、実質は庭なので中になる。
 庭はどこを通っても緑豊かで、手入れが行き届いている。植物庭園に行くと、色とりどりの花も見受けられる。
 見たことのある花もあれば、見たことのない不思議な花までさまざま。じっくり見ようと思ったら、丸一日を費やしても足りないくらいかな。

「妃様はこちらが大変御気に召されたようですね」

 一人じっと見ていたらジルの声がした。そういえば、案内してくれていたっけ。忘れてしまうほど、魅入ってしまっていたってこと?

「え、ええ。きれいなものを見ると、心がとても落ち着くの」

 そう、今は不思議と落ち着いている。昨日までのことなんか忘れてしまいそうなくらいに。
 特に、寝る前になり洗面所に向かった時のこと。
 それは今までにない衝撃で、時が止まったかと思った。一番、信じることができなかった――。




「そろそろ寝ようかな……」

 お昼寝など沢山したけど、流石に疲れている。寝る前に洗面所に行き、鏡をのぞいたときだった。
 その鏡はまるで、御伽噺に出てきそうな大きな円い鏡。淵は金の装飾でできていてとても高価なもの。

 そして、そこに映った人の姿も、まるでその御伽噺に出てくる人のように見えた。

「ちょっと、何これ……誰よ、これ」