顔を上げると、

そこには香月ちゃんの姿があった。




『香月ちゃん…わ…私のことがわかるの?』



目の前にはにっこり笑う香月ちゃん。



『ごめん、佳菜。つらい思いさせたね』



そう言って笑いながら私の頭を撫でてくれた。



つらい思いをしてるのは香月ちゃんなのに。


私は何も

本当に何も力になれなかったのに。


涙が止まらない。


視界が涙でちゃんと香月ちゃんの顔が見えない。



『昨日、記憶戻ったんだ。

佳菜の事もかおりさんの事も思い出したよ』



嬉しいのに、

何か言いたいのに、
言葉にならなくて

ただ香月ちゃんの手を握る事しかできない。



『佳菜…ホントごめんね…』



違う、謝るのは私なのに。

私を庇わなければ香月ちゃんこんな事にならなかったのに。


フルフルと首を横に振ると、

香月ちゃんが力強く抱きしめてくれた。

香月ちゃんの温かさが嬉しくて、

私はまたたくさん泣いてしまった。