花火後、さっさと部屋に帰って布団に潜り込むものの、


中々寝付けず寝たのは3時を過ぎていた。



部屋で、佳菜は一切潤也の話しをしなかった。




千里も聞きだそうとはするものの、佳菜が話したがらない為、諦めたみたいだった。



----翌日----




寝るのが遅かったあたしは案の定寝坊。



佳菜が必死に起こしてくれたお陰で、何とか練習には間に合った。





練習中、あたしは佳菜と潤也が2人でいるところを見たくなくて雑用を必死にやり続けた。




『香月さん、今日の晩ごはんはバーベキューだよ』



あたしが黙々と雑用してると千里が手伝いにきた。



『2泊3日で、今日が最後の夜だから、顧問の奥さんとコーチの奥さんが内緒で準備してくれてたみたい』



『まじ!?やった!!あたし超腹減ってたんだよね』



バーベキューって聞いたあたしはやっとテンションが上がってきた。




バーベキューなんて久しぶりだし、



何より合宿最後の夜。




佳菜には悪いけど、最後の夜くらい潤也と過ごそう!!




あたしは意気込んで張り切って雑用を終わらせた。





だけど……




あたしの意思とは裏腹に、部員の皆が



佳菜と潤也をくっつけようと企んでいた。




『ね、香月ちゃんはさー』



あたしから潤也を遠ざける為か、次々とあたしの回りに部員が集まる。





あたしは潤也と話したくてもみんなに囲まれてしまって、

2人っきりの潤也と佳菜を目で追う事しか出来なかった。




『香月ちゃん、今から肝試しやるから行こうよ』




片付けが終わり、部屋に帰ろうとするあたしを部員が呼びに来た。




……肝試しか…




潤也と回れる可能性に掛けてあたしも参加する事にした。





だけど、しっかり仕込まれたくじ引きにより、


見事に潤也は



佳菜とペアになっていた。




そして、あたしは…



『雨宮さん、俺とペアだよ』




部長とペアだった。



まぁ、部長ならいっか…




あたしは潔く潤也とのペアは諦めた。




だけど、どうにかして潤也と回ってやろうと企んだ。




そして、都合良く



潤也・佳菜ペアの後


部長・あたしのペア出発になった。




さっさと歩いて潤也達に追いつくべく、あたしは部長をリードした。




怖がるフリをしながら走っていると、




潤也と佳菜に追いついた。




だけど……




暑いなか、ぴったり寄り添って




怖がる佳菜を守る潤也。




まるで抱き合うかの様な2人。




もう、誰が見てもカップルにしか見えない。




おまけに、お互い楽しみながら肝試しを満喫してる様だった。



あたしは、そんな2人を見て



後頭部を金づちで思いっきり殴られた様な感覚に陥ってしまって




前に進む事が出来ず立ちすくんでしまった。





佳菜の邪魔をしようとしたバツなのか、



寄り添う2人が闇に消えてもまだ




あたしはその場から動けずにいた。




もう…



…イヤだ……



2人が仲良さそうにいるのを見るだけで



痛い。





胸を思いっきり突き刺される。




こんな思いしたくないのに…




知らず知らずに目は潤也を追ってしまう。




でも……

追う先に隣にいるのは、いつも佳菜……




痛い。




痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。






ダメだ。




このままじゃあたし……









壊れてしまう。








『雨宮さん…』





あたしは部長の声にハッとした。





…肝試し中だったんだっけ…



『あ…すみません…』


あたしはか細い声で謝罪した。





いきなり勢いをなくしたあたしを部長はかなり心配していた様だった。





そして、


『…ちょっとごめんね』





と言ったかと思うと、急に部長が近づいてきた。





『うわっ!?』



あたしの体が宙に浮き、視界が反転した。




……!?!?




あたしは部長にお姫様抱っこされていた。