片付けは、部員にも手伝わせたお陰で早く終わった。
『よし。千里、部屋戻って風呂行こ』
『うん。佳菜も帰って来てるだろうしね』
『早く風呂入りてぇー…体中ベタベタ』
『私もー。しかも大きい鍋かき混ぜたから腕も痛いよ』
『明日、100%筋肉痛だな』
『うん…てか、今…筋肉痛ちょっとキてる…』
千里と文句垂れながら部屋に行くと佳菜がいた。
『お、佳菜--。今から風呂行くぞ』
あたしが声をかけると、佳菜は申し訳なさそうに、
『…ごめん、私先に入って来ちゃった…』
と言うと、片付けを手伝わなかった事も謝っていた。
あたしと千里が風呂から上がると、
待ち構えていたかの様に部員集まってきた。
『千里、雨宮さん一緒に花火しようよ』
『今、顧問使って花火買ってきたんだ』
『さ!やろ、やろ!!』
『わかった。一度部屋帰って荷物置いて行く』
『やった!!あ、佳菜は今、潤也と飯食ってるから』
『え?』
2人で飯…?
『潤也の体調も戻ったらしくて、今から食うんだって』
花火…潤也と一緒にしたいのに。
『2人待っとかないの?』
千里が聞くと、部員は一斉に顔を合わせて
『あの2人を邪魔しちゃダメでしょ』
『あの2人両想いだかんな~』
『特に、佳菜とか潤也しか眼中にないのモロ出てるしな』
と口々に言い出した。
『…あの2人付き合って…』
あたしは何とか声を絞り出して聞いた。
『や、まだだよ』
『時間の問題だよな』
『だから2人っきりの時間を作ってやってんの!!』
皆で佳菜と潤也の話しで盛り上がってる中、
あたしはただ呆然と立ちすくむ事しか出来なかった。
皆の話し声もすべて
あたしには届いていなかった。
『はい、雨宮さん』
目の前に花火が差し出された。
『あ…どおも』
あたしいつの間に荷物置いたんだっけ…
潤也と佳菜の話しを聞いてから、頭の中が真っ白になって…
その辺りから覚えてないな…
『雨宮さん、火』
…え??
『火…?』
『早くしないと俺の花火消える…!』
ハッとして手元を見ると、部長があたしの花火に火を付けてくれようとしていた。
『よし、火ついたね』
あたしの手元を見ると線香花火がついていた。
『…キレイ』
線香花火…
あたしの今の心境にぴったりな花火…。
花火の火を見つめながら、
あたしの頭の中はずっと潤也と佳菜のことがグルグル渦巻いていた。
花火後、さっさと部屋に帰って布団に潜り込むものの、
中々寝付けず寝たのは3時を過ぎていた。
部屋で、佳菜は一切潤也の話しをしなかった。
千里も聞きだそうとはするものの、佳菜が話したがらない為、諦めたみたいだった。
----翌日----
寝るのが遅かったあたしは案の定寝坊。
佳菜が必死に起こしてくれたお陰で、何とか練習には間に合った。
練習中、あたしは佳菜と潤也が2人でいるところを見たくなくて雑用を必死にやり続けた。
『香月さん、今日の晩ごはんはバーベキューだよ』
あたしが黙々と雑用してると千里が手伝いにきた。
『2泊3日で、今日が最後の夜だから、顧問の奥さんとコーチの奥さんが内緒で準備してくれてたみたい』
『まじ!?やった!!あたし超腹減ってたんだよね』
バーベキューって聞いたあたしはやっとテンションが上がってきた。
バーベキューなんて久しぶりだし、
何より合宿最後の夜。
佳菜には悪いけど、最後の夜くらい潤也と過ごそう!!
あたしは意気込んで張り切って雑用を終わらせた。
だけど……
あたしの意思とは裏腹に、部員の皆が
佳菜と潤也をくっつけようと企んでいた。
『ね、香月ちゃんはさー』
あたしから潤也を遠ざける為か、次々とあたしの回りに部員が集まる。
あたしは潤也と話したくてもみんなに囲まれてしまって、
2人っきりの潤也と佳菜を目で追う事しか出来なかった。
『香月ちゃん、今から肝試しやるから行こうよ』
片付けが終わり、部屋に帰ろうとするあたしを部員が呼びに来た。
……肝試しか…
潤也と回れる可能性に掛けてあたしも参加する事にした。
だけど、しっかり仕込まれたくじ引きにより、
見事に潤也は
佳菜とペアになっていた。
そして、あたしは…
『雨宮さん、俺とペアだよ』
部長とペアだった。