「柚羽ちゃんの部屋って、なんか落ち着くね」
「えっ、そうですか?殺風景な部屋ですけど」
「殺風景だからこそ、かなぁ」
結崎さんが部屋をぐるりと見渡す。
本当に殺風景な部屋だ。
生活に必要な物しかないし、ヌイグルミとか植物さえもない。
諒子が初めてここに来たときは「女の子らしくないなぁ」と呆れていた。
「結崎さん、おかわり…」
空になった結崎さんのコップに気付いて、ジュースを手にした時だった。
「いいよ、永輝で」
「えっ?」
「もうバイト辞めてるし、なんか、堅苦しい」
苦笑いする結崎さんを前に、私は顔が火照るのを感じた。
いきなり呼び捨てなんて、できやしない。
私より年上で、しかも、大好きな人。
そう呼ぶことで、距離が縮まるような気はしたけれど、でも……。