ヒールを脱いだ等身大サイズのユチを見ると、一日を噛み締めるように和んだ。
そんな余韻に浸る間もなく、ユチは風呂に浸かってしまうが
「マサー、ちょっと来てー」
それはそれで幸せな一時でもある。
「またシャワー浴びずに入ったろ」
「溜まった脂を湯水に浸かって流すのが浴槽本来の役目なのですよ」
「次、俺入るんですけど」
「私のスープに?」
「気持ち悪い例えをするな」
「しょうがないじゃん、私は脂性に生まれちゃったんだから。この運命を誰が変えられる?」
「脂性とか女子の口から聞きたくない」
「甘ったれんな2次元萌え」
「変な呼称つけないで」
「そんなのいいから……ほら」
ユチの細い腕に触れる。
いつものように慣れた手つきで、赤く腫れた薄い皮膚に白い軟膏を塗り込む。
「……今日は一段とヒドいな」
「めっちゃ嫌いなタイプの客でさ」
その客は二の腕伝いに脇腹、恐らくは胸に触れたのだろう。
湿疹が太い線を描くように続いていた。
「風呂出てからじゃなくていいのか」
「痒くて風呂どころじゃないって」
「どうせまた後で塗るのにな」
「いいのっ」
これよりも酷い発疹を見せた日もあった。