くわえていた煙草を灰皿に置き、
化粧ポーチから取り出した安全ピ
ンを一舐めする。
彼が唖然として見ていると、彼女
は「しょっうっどっくっ」と唾液
たっぷりの安全ピンを彼の処女耳
に当てる。
心臓が妙に跳ね上がった。

「我慢しちゃダメだよ、気持ちイ
 イって感じるんだよ」
「無理」
「ピアスを開ける醐醍味ですよ」
「…努力するよ」

彼女が耳元で息を吸った。
そして「いくよ」と一言呟く。
彼も目を閉じ、同じように「ん」
と短い返事を彼女にプレゼントす
る。

気持ちいい、気持ちイイと念じて
みるが緊張が広がるだけだった。
片目を開けて彼女を見ると興奮し
たような、頬が紅潮している。



「  っ 」


短い呻き声を発す。
ニヒルき笑っている彼女を想像し
ながらまた片目を開けると、彼女
は恍惚を彼の表情を窺っていた。

「ね、気持ちい、あつい」
「外国人みたいだ」
「ね、ね、処女脱出やったね」
「う、ん」
「ヌくよ」

待って、と言った彼の言葉を受け
流し彼女は安全ピンを抜く。
そして自分の耳から外した王冠の
ピアスを開いたばっかりの空洞に
突っ込む。

「う、あ熱い」
「でしょ、癖になるでしょ」
「ならない、ああ痛い、嘘つき」

開けたときは溶かした鉄を当てら
れている感覚だったが、暫くする
と鈍痛が彼を襲う。

「恍惚として見ないでください」
「イッたときの顔に似てたよ」
「ちょ、黙ってください」
「気持ちよかった?」

何故か頷いている自分がいて。
ああ、僕らは似たもの同士と再確
認した。




-完-