女性は、
部屋に入り、
障子を閉めて、
私の傍らに座った。

そして、
持ってきたお膳を
そっと傍らに置く。


「大丈夫ですか?」


「はい…すみません…お世話になってしまって…」

私は、徐に体を起こす。

「起きても大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

そして、暫く茫然となった。

「お腹はすいてませんか?お口に合うかわかりませんけど」

「あ、大丈夫です、そんなことまで…」

と言った途端、
私のお腹が、物凄い音で鳴った。

「あらぁ」

女性がケタケタと微笑む。

「あったまりますよ。どうぞ」


「…有難うございます…」


お腹が鳴ったことの体裁の悪さを苦笑いしながら、有難く、女性の差し出したお粥を、
そっと受け取った。

そして、
一口。


「あぁ…美味しい」


「そうですか、良かった」


女性は、目を細めて微笑んだ。


「あ!」

「どうかしました?」

「すみません申し遅れました、私は、相沢 悠と申します」

「アイザワ ユウさんですか。こちらこそ申し遅れました。私は、藤森 希毬です」

「フジモリ キマリさん」

「はい。よろしく」

「こちらこそ。すみません。初対面なのに、御迷惑をおかけしました」

「いいえ。
まぁ…倒れられた時には、凄く驚きましたけどね。
でも、良かった。
ゆっくりされてもらっても構いませんからね」

そう言って、
希毬は、掛け時計の方へと歩み寄る。

そして、
時計のネジを回し始めた。

どうやら
時計が止まっていたらしい。


「懐かしいなぁ…」


「え?」


「あっいいえ、我が家ではもう、そういう時計は使ってないもので」

「え?使ってないの?」


「はい。小さい頃に祖父の家で見たことはあります。でも、買い換えましたから」


「買い換えた」


「えぇ」


私の言葉に、
希毬は、私を見ながら考えている様子。