吉川さんと綾乃ちゃんは
「あとは若い者に任せて」
とお決まりの文句を残して、一次会で二人でさっさと消えてしまった。

合コンは結構盛り上がっていたし、この場限りで別れるのも淋しい気がして、6人でカラオケに行くことになった。

綾乃ちゃんがいなくなったので、少し心細くもあったが、成海さんといられるのなら、と私もついていった。

まさに男女の付き合いの楽しさを謳歌する人たち。

恥ずかしながらこういうことにほぼ無縁だったため、何か場違いなところに来てしまったようでなんとなく居心地が悪い。

成海さんと一緒にいたくて、なるべく側にいたいけど、そう思っているのは私だけだ。

うっとおしい、と思われるのは嫌だし、付いて回るのも気が引ける。

成海さんは他の子とも話したいだろうし、まして、誰かを気に入ったかもしれない。

カラオケの部屋が薄暗いせいか、自分の気持ちもどんどん暗くなっていく。

終わりの時間も近づいてきて、何か哀しくなって下を向いていたら、気がつくと成海さんが隣に座っていた。

肩と肩がふれあって、暖かいぬくもりを感じる。

成海さんを感じる。

すごくすごく、暖かくて、幸せで、嬉しくて。

束の間、このままこうしていたくて目を閉じた。

そこに、ふいに成海さんのささやく様な声が聞こえた。

「電話番号、教えてよ」

びっくりして後ずさりしながら成海さんの顔を見る。

その私の反応にぎょっとしたような成海さんの顔があった。

成海さんの反対側に誰かが座っているのかと思った。

私に異論などあろうはずもない。

舞い上がり、口で即答する私に

「覚えられないよ。紙に書いてよ」

と慌てた声でMさんが言った。