暗がりの路地で足を痛めた女を見た。裸足だった。顔は、泣きそうに歪んでいた。冬が近かったのでよく覚えている。寒い日ではなかったけれど、それでも風が肌に痛かった。空は重くて沈んでしまいそうだった。鳥が飛んでいた、ように思う。鳴き声は短い悲鳴みたいで、しかし人々に空を見上げる余裕はない。同じく路地の奥を気にする人も、やはりいない。そういえば猫に似ている。尾は無いけれど、瞳はアーモンドみたいで。毛並は悪くない。やはり猫のようだ。ねずみを追い掛け回していたのかもしれない。痛んだ足で。傷んだ靴で。どこまで走って「起きてください」

 ……。