だってほら、僕のことを信用していない目をしているもの、君は。悪戯な笑顔の、貴方が指したゆびさきを横目で追いながら僕は、あまりにもできすぎた台詞を吐く貴方の口を塞いでやりたいと考える。よこす視線の完璧さは、誰もが認めるところだけど。(でも本当は怯えている?)心を開けないのは、なにも僕だけじゃあ、ない。そんなことを言う貴方の方がよっぽど。つまらない探り合いは連続すればするほどぼろぼろに欠ける諸刃の剣。僕も貴方も、おたがいが自分の事を傷付けていることに何故気付かない。



「もっと静かなとこが良かった」
「すみませんねぇ気が利かなくて」
「……怒ってる?」
「何でそう思います?」
「……や、何となく」
「理由が無いでしょう、理由が」
「そうだけどさー……」
「……まだ何かあるんですか?」
「別にぃ……」


 唇尖らせて叱られた子供みたいな顔をして、僕のほうをちらちらと見る貴方に一体何のつもりですかと言おうとしたら、店員のばかでかい声にかき消され、悟るにはまだまだだということを何となく覚って貴方の声を聞かないことにする。黙殺ではない返事をしないだけだと偽って(何を? 貴方を? いいえ。僕を)なんてつまらない喜劇なのだと途方に暮れるしかなかった。