「静乃、待って。」



疾風が一歩踏み出すと、静乃が一歩下がる。



追いかけようと、疾風が二歩踏み出すと、静乃は二歩下がった。



「静乃、違…。」



疾風の言葉を最後まで聞かず、静乃は踵を返して走った。



聞きたくない、聞きたくない!



結婚するなんて!



私、疾風が好きなのに、



結婚するなんて!



静乃は無我夢中で走り、裏口に回った。



引っ掴むように戸を開け、階段を駆け上がった。



自分の部屋に逃げ込み、勢いよく襖を閉める。



「疾風…。」



ずるずると、座り込む。



足が震えて立っていられなかった。