「行かないで!」



疾風の背中に、女の子が抱きついていた。



「疾風…。
私、貴方が大好きなんです、他の女の所になんか行かないで!」



疾風を呼び捨てにしている。



疾風、知り合いなの?



静乃は人混みの中に立ちすくんだ。



運悪く、見てしまった静乃は呆然とその光景を見ていた。



「私達、結婚するんですもの、他の人なんか必要ないでしょう?」



結…婚…?



疾風が?



そんな話、知らなかった。



当たり前か、別に言わなくてもいいもんね。



私達、ただの友達なんだから。



勝手に私が片思いしてるだけなんだから。