静乃と出かける。
しかも、誘ってくれた。
疾風は嬉しくて嬉しくて、静乃が出て行った後布団から飛び起きた。
「どれ着ていこう。」
迷った挙句、疾風はいつも着ていくお気に入りの着物を羽織った。
静乃と出かける時しか着ない着物だ。
疾風にとって、特別な着物になっている。
斜向かいでは、静乃も悩んでいるであろう。
そう思うと、なんだか嬉しくて照れくさかった。
小判を入れた財布を胸ポケットにしまい、疾風は表へ出た。
階段を下りながら、静乃はもう来ただろうかと考える。
「父さん、俺出かけてくる。」
「また静乃とか。」
宗治は笑って疾風の着物を見た。
「うるさいなぁ。」
「特別」を見破られているのが悔しかった。