──ズキリ。

 何かを思い出す度に、頭痛が酷くなっていく。
 そのうち、自転車すら漕げなくなってしまう。
 私は自転車から降りて何とか道端に停めて、頭を抱えて踞った。

──イタイ。

──カナシイ。

────クルシイ。

 そのうち、視界が歪んで地面が濡れていく事に気づく。
 私は、泣いていた。
 溢れ出した涙は、ぼたぼたと落ちていく。
 何故こんなにもカナシイのだろう。

 嗚咽が漏れ始めた頃に、歪んだ視界の前に青色が映る。

……スニーカー?

「泣かないでよ」

「……っ、うん」

「もう少しだから、頑張って」

「……もう無理だよ」

「オマエなら出来るよ」

 青色のスニーカーは遠ざかっていく。
 ガチャン、という音の後に微かに自転車の車輪の回る音が聞こえた。

「……行かないで!」

「なら、着いておいでよ」

 穏やかな声だった。
 私は涙を強引に腕で拭ってから、立ち上がって自転車の支えを外して、跨がる。

 ふらふらしながら、泣きながら、彼のあとを追いかけた。