あの人は青が好きだった。
 理由は、彼曰く空の色だから。

 私がそれは水色でしょ?と反抗すれば、彼は益々向きになって青色だと言った。

 自転車も、鉛筆も、消しゴムも。

 彼の持ち物は呆れる程に青ばかりだった。

 だけど、私は嫌いじゃなかった。
 彼の好きなものは、何でも好きになりたいと思ったから。

 中でも、青色の自転車が好きだった。
 彼は見た目が悪くなるのも気にせずに、後輪に私の特等席を作ってくれた。
 私はいつも、そこに座って風を感じながら彼の背中に顔を埋めるのが大好きだった。

 大好きな彼の色。

 それが、青だった。

──アオ、ダッタ。