後日、改めて蒼井の墓参りに行く事にした。

 母にその事を伝えれば、私を目一杯抱き締めてくれた。

 順番が逆かな、とは思ったが、蒼井の家に連絡を入れてから先に行く事にした。

「美夜ちゃん、いらっしゃい」

「お久しぶりです」

「まあ、随分美人さんになったわね」

 蒼井のお母さんは、ぽっちゃりした人だったのに、随分と痩せていた。

「そんなこと無いですよ?」

「ふふ、あ、そうそう。桜餅があるのよ。入って入って!」

「はい、お邪魔します」

 家の中に入ると、懐かしい香りがして思わず泣きそうになるけれど、唇をぎゅ、と噛んで我慢した。



 蒼井のお母さんは、仏壇がある畳の部屋に案内してくれた。

「参ってあげて?」

 そう言ってくれたので、私は待っている間、リンを鳴らして合掌し、遅くなってごめんね、と心の中で思ってから、手を下ろして目を開けた。

 目の前の写真は、どこか照れ臭そうに笑っていた。

「緑茶で良かったかしら」

 蒼井のお母さんは部屋に入ると、小さな湯飲みに入った緑茶を木製のコースターをしいてから、中央にあった木目の綺麗で部屋の半分くらいの長さの大きな机の上に置く。

「はい。ありがとうございます」

 その横には桜餅が置かれた。

「……来てくれて、有り難う」

「此方こそ、来れなくてごめんなさい」

「いいのよ、気に病まないで。……そうだ。渡して良いのか迷ったんだけれど、きっとあのこは貴女にあげるつもりだったんだろうから……」

 そう言いながら、蒼井のお母さんは仏壇の横に飾ってあった小さな箱を渡して、開ける様に促す。

 中に入っていたのは、裏側に桃色の石がついた指輪だった。

「きっと、二つあったから、一つは貴女のだろうって話していたのよ。良かったら貰ってやって……って、あら、一つしかないわね。何処に行ったのかしら……」

 私が良いんです、と言うと、彼女はそうね、と寂しそうに微笑んだ。