大事なものは、いつだって気付かない所にあって。
 失ってからしか気付けない事の方が多い。

 どれだけ辛い事が起きても、心臓が動いて、呼吸して、生きている限りは前に進まなければいけない。

 立ち止まってしまえば、大切な誰かを泣かせてしまったり、傷つけてしまったり、悲しませてしまうから。

 未熟だった私に、蒼井がそれを気付かせてくれた。教えてくれた。

 私は、精一杯日々を生きていく。


「美咲」

「……ん?」

「ありがとう」

「……何いきなり、気持ち悪ッ!」

 それから、言えるうちに何度でも言うよ。

「ありがとう」