私が美咲との約束を思い出して映画館へと向かった時、八時を越えていた。

「やっぱり待ってない……かな?」

 案の定、待ち合わせの場所には誰もいなかった。

 ひっつかんできたケータイの電源を入れて画面を見れば、メール30件、着信20件と出ていた。

「……ヒィィ!!」

──恐怖から鳥肌が立つって、こういう感覚なんですね。

 連絡する前に、一応メールだけは一通り目を通そうと思って、一通ずつ読んでいく事にした。


件名:今どこ?
今日映画行くんでしょ?忘れたの??

件名:美夜!!
もう来ないなら先に見てるから!
映画始まるし!

 最初の五件は、予想通りのお怒りのメールだった。
 けれど、次からのメールは違っていた。

件名:どうした?
まさか寝てる?
本当に大丈夫?

件名:美夜!
見たら返事して!
いいからはやく!
電話でもいいから
動けないならそこまで行くから!


 美咲は、蒼井と私の関係を知ってくれていて、私自身もよく相談にのって貰っていた。

 彼女は彼女なりに、私が忘れてしまったのなら思い出さない様にと、色々気を使ってくれていたのだろうと、今ならわかる。