──はらり。

 毎年、春が来れば去年と変わらずに桜の花びらは咲き、そして散る。

 私が立っていたのは、あの桜並木の、去年のあの日に二人で立っていたその場所だった。

 先程の出来事は桜が見せた幻影だったのだろうか。

 そうは考えてみたが、手の中感じるこの感触は、花びらや自分の持ち物とは違う。

 指をほどけば、キラリ、と銀色に光るものが見えた。

──将来、婚約するんだったら指輪欲しいね。内側に石がついた指輪で……私が赤で、蒼井が青かな。
交換してつけるのよ?だから私が青を付けるの!


 青色の石が嵌め込まれた、銀色の指輪。
 丁度、私の薬指のサイズになっていた。