だからこの街にきても

何も期待はしていなかった。

生活のために仕事をして

絵を描くことで

自分を見失わないように

立ってることが精一杯だった。

杏にとって、友達や男に

幸せにしてもらうなんていう

発想はばかげていた。


ただ、大好きな絵を描いている

時だけが自分らしくいられた。

だから、卒業してから

環境のいい川の近くを選んだ。


一本道を挟むと高級住宅街の

この街は杏には憧れであり

食費を減らしてでも

住んでみたい場所だった。