そんなことを考えていると時間が経つのが速いらしい…

奥からおじいさんが写真とネガを持ってきた。


「待たせたね、出来上がったよ。」



「わっ、早かったですね、ありがとうございます。」


そう言ってお礼を言うと僕は写真に手を伸ばす。



するとおじいさんが何気に僕に問いかけてきた。


「そのフィルムなんだがね、
写っていたのが一枚しかなかったんだけどそれで良かったのかい?」


「あ、…はい…それしか撮ってないんです…」



「…そうかい。
いやね、私もこんな年だからへまをしたんじゃないかってね…そう思ってたんだが…それでよかったようだね。」


おじいさんは少し苦笑しながら喋っていた。

そして少しの間を空けてまた喋りだした。


「でも、君は
なかなかセンスがいいね。

被写体に対する思いが伝わってくるよ。
この構図といい
一見、目を逸らしてるように見えて
ちゃんとこちらを見据えている。

ちょっとしたチラリズムの境地じゃな…」



「えっ!?」


そんなわけないよ…
相手が気付かない内に撮った隠し撮りみたいなもんだし…

そう思いながら
出来上がったその写真を見た…