暫くして暖炉からパチパチと聞こえ始めるとアサガが口を開いた。

「…これから……行く所あるの?」

ついさっきまで部屋に差し込んでいた茜色はもうすっかり紺碧になり、もうすぐ闇へと変わる。
同じ様に私の心も濃い色へと変わった。すうっと血の気が引くような感じがし、目の前が微かに揺れる。

「………」

何も答えられない私は俯く。
そんな私の耳に聞こえたのは、小さく息を吐く音。
ジンとアサガどちらのものかはわからないが、聞こえた溜息に私は膝の上できつく拳を握った。

「どうして…どうして、私を助けたんですか?」

振り絞るように声を出し、二人を交互に見る。
目の前にはジン。右隣にはアサガ。
もう少し迷惑そうな顔をしてるのかと思っていたがその予想は外れる。
ジンはいつも通りの感情を表に出さないような、強いて言えば無表情。
アサガに至っては微かに笑みを浮かべていた。