「うん。似合ってる。」

寝室から出て来た私を見てアサガは満足そうにする。
ジンは昨夜と同じ酒を飲みながら私を見て、そして少し目を細めた。
アサガの手元にもジンと同じ果実酒が置いてあり、私は寝室で着替えている間に二人で飲み始めたようだ。

「ありがとう。」
私はもう一度二人に礼を言う。
それを聞いた二人は笑みを浮かべた。

必死になって逃げていた時には、こんな事になるとは思ってもいなかった…。

先程まで私が座っていた椅子にはあの時身に纏っていた布。
ふと手に取りそれを広げてみると、あの時の事をまざまざと思い出させる。

木の枝に引っ掛かっても、転んでも、刃物の切っ先が身を掠めても、そんな事は気にしていられなかった。
小さく穴が開いたり裂けたり。それから点々といたる所に付いた血痕。
血痕はそれだけに留まらず、布の一部には大きな染みを作っていた。

この大きな染みは恐らく、手首を切った時に流れ出た血液だろう。