「ありがとう…」

淡い青色のそれを広げた時には、その言葉が自然と零れていた。

大判の薄い布。
女性はこれを一枚、もしくは二枚を使い着衣にするのだ。
アサガが買ってきてくれたのは、私の服だった。

今、私が身につけているのは男性用。恐らくジンの物なのだろう。
ここから逃げようとした時に、ベッドの足元に置かれていた自分の服を持ち出した。それは今は畳んで膝の上に置いてある。
それに視線を落とすと暗い時には分からなかったが、血液の汚れが所々に染み付き生地自体も傷んでいた。

「いつまでもその格好っていうのもどうかと思うしね。女の子が男性物の服を着てると目立っちゃうでしょ?」
そう言ってアサガは微笑む。
確かに女性が男性物の服を着ていると目立つ、だから私は自分の服を掴んで逃げようとしたのだ。

出来るだけ人目を引きたくなかったから…。

「着替えて来る?」

「うん。」
私はアサガに言われて頷くと、男性物の長衣の裾を翻し寝室へ向かった。