しかし私は昨日と同じようにそれに口を付けない。
そんな私を二人は怪訝な目で見ていた。

「薬、飲まないの?手首も喉もまだ痛いんじゃない?」

私の掠れた声に気付いているのか、アサガは言うが私はそう言われてもそのコップを手に取る事はなかった。

「ごめんなさい…」
私はただ謝りの言葉を言う事しか出来なかった。

“飲まない”のではなく“飲めない”のだ。
だがその事を説明するとなると、他の触れて欲しくない事まで言わなければならない。
だから、私はそのまま口を噤む事になってしまった。

「飲みたくないのなら、別にいい。身体の具合もよくなってるみたいだし。」
そう言ったのはジンだった。

今もまだ手首と喉の痛みはあるが、確かに身体の具合はかなり良くなっている。
頭の痛みも重い身体も、もう私にはなかった。

「じゃあ、ちゃんと食事して。それから無理して身体を動かさないようにね。」
笑みを浮かべたアサガは言うと立ち上がる。

「ジン。日が沈むまでには帰ってくるから。」
ジンに言うと、「じゃあね。オルビナ。」ヒラヒラと手を振り出て行った。