助けてくれて、怪我の手当てまでしてくれたのが、今私の目の前にいるこの男だという事は分かっている。

寝床を提供してくれて、食事まで与えてくれた。

だがそれの意味する事が私にはわからない。
何故私を助けたのか、何か目的があってそうしたのか。
私を助けて、これからどうするつもりなのだろう。

そんな疑問が睡眠と食欲の満たされた今、私の頭の中を過ぎる。
突然湧き上がった恐怖心を振りはらう事が出来なかった。
熱もまだ下がっておらず決して良いとは言えない体調だが、直ぐにでもここから逃げ出すべきなのだろうか。

体調は万全ではないが、この男一人ならどうにかなるかもしれない。

薬の入ったコップを受け取らない私に冷たい眼差しを向ける男。
私よりもはるかに大きな身体と、逞しい筋肉。
見ただけで分かる。今の私を勝る男の身体能力。
でも、不意を付けば…

そんな事を考えながらちらっと男の様子を伺うと、私に薬を受け取らす事を諦めたのか、さっきまで握っていたコップをテーブルに置いている。
そして何時の間に持って来たのか赤い色をした飲み物、恐らく何か果物のお酒を飲んでいた。